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【例会開催レポート】次世代型スモール M&A 成熟へ向かうM&A市場の勝ち筋―― 士業こそ担い手になれる、事業承継支援の最前線

【例会開催レポート】次世代型スモール M&A 成熟へ向かうM&A市場の勝ち筋

2025 年 7 月 4 日、スモール M&A研究会は第 21 回定例会をハイブリッド形式で開催しました。

今回のゲストは、合同会社そうわ経営パートナー 尾形 吉通 氏(中小企業診断士)です。

公的支援機関での豊富な実務経験をもとに、
「M&Aプレーヤーの最新動向と提携のヒント」をテーマに講演いただきました。

本稿では守秘に配慮しつつ、士業の皆さまに“次の一手”を考えていただける要点を整理しています。
ディープな事例と具体的スキームは例会のみの共有となっています。─── ご興味があられる方はぜひ現場でご体感ください。

第 21 回定例会①
目次

市場は踊り場、信頼と連携が新しい差別化軸

尾形氏は冒頭、近年のスモール M&A市場を

「急拡大フェーズから“成熟と選別のフェーズ”へ移行しつつある」

と表現しました。規制や資格創設の議論が本格化し、
公的機関・金融機関が安心して紹介できる士業ネットワークの価値が高まる局面となっているようです。

  • 公的支援機関: 民間では手が届かない事業承継支援を補完する
  • 地域金融機関: M&A事業への本格参入はまだ極一部

士業はこうした“川上”で生まれる案件を受け止めやすいポジションにあるので、今後の地域経済に欠かせないパートナーになり得ます。

公的窓口は「一次情報の宝庫」―― 手数料ゼロ&民間と“バッティングしない”利点

公的窓口は「一次情報の宝庫」―― 手数料ゼロ&民間と“バッティングしない”利点
公的窓口を活用するメリット(民間との関係)
  • 手数料ビジネスと競合しない:公的機関はフィーを取らないので利害関係のない支援ができる
  • 民間との役割分担と連携:公的機関は競合ではなく連携先として捉える。特に士業は連携しやすい。
    • → 士業側にも実務で関与する余地が十分残る。
    • → 登録、連携には実績が必要。

地域金融機関の連携ポイント

地域金融機関にはそれぞれ共通する目的と、果たすべき指標があります。単にM&Aの連携をしましょう、では先方のメリットが見えてきません。

例会では、具体的な事例を交えノウハウをお話いただきました。

商工団体が求めるもの――「信頼が全て。入口相談から実行まで任せられるワンストップパートナー」

商工会・商工会議所は、地域の中小企業から多数の事業承継相談を受けています。

しかし 日々、多数の事業者から多種多目な経営課題が持ち込まれます。
それを限られた人員で対応しなければなりません。
事業承継と言う時間もロードも大量に消費される業務に、1社1社完全に向き合うのは難しいのが現実です。

その結果、次のような外部パートナー(スキーム)が“理想像”になりやすいと考えられます。

求められるパートナー像(仮説)
  • 入口(初期ヒアリング/方向性整理)から実行支援(計画・合意・手続)まで一気通貫で対応 できるサポーター
  • クイックレスポンスで信頼度が高く、取引実績も豊富、その地域で活発に活動し認知を得ている

などが必要になってきます。

当研究会モデルの適合性

当研究会が目指す「地域ごとに複数の士業が専門分野を補い合い、標準化されたプロセスで連携するチーム型支援」は、
商工団体側のニーズにも合致しやすいと考えられます。

“個人の得意分野だけ” でなく “チームで最後まで” を提示することでさらなる差別化を提示できると考えます。

士業に開かれた3つのチャンス

士業に開かれた3つのチャンス

「士業だからこそ“単発の仲介手数料”ではなく
 “長く寄り添う継続報酬”を組み立てられる」

── 尾形氏はそう語りました。

仲介会社が「成約一発」に偏りがちな一方、士業は前・途中・完了後のそれぞれで別の支援を用意できます。“売買を終わらせて終わり” ではなく、企業側の利益や安心につながる工程を段階的に積み重ね、長期関与へつなげやすい立場です。

以下の3フェーズで、それぞれ“何ができるか”を整理すると、提案づくりが一気に楽になります。

フェーズ機会士業が発揮できる強み
① マッチング前事業者ヒアリング、適正評価、財務・法務リスクの洗い出し中立的デューデリジェンスと「本当に今やるべきか」の整理
② マッチング後スキーム設計、保証人・担保・補助金の同時整理多士業連携で税務・法務・資金を一枚にまとめ“抜け漏れゼロ”
③ クロージング後経営改善計画、統合作業(PMI)、人材・税務・法務の継続フォロー100日計画と定期モニタで成果を形にし顧問業務化

この「前→中→後」を一連の“道筋”として提示できれば、単発の価格競争から離れ、価値を納得してもらいやすくなります。

第 21 回定例会②

おわりに ― “品位ある専門家ネットワーク” をめざして

いま、市場は本格的な規制強化と質の選別の入り口にあります。これを経て成熟市場に向かう時期です。

だからこそ私たち士業が示すべき差別化軸は、過度な宣伝ではなく 誠実な情報開示・倫理観・再現性あるプロセス です。

これから重要になる 3 つの視点
  • 透明性と品位:案件情報/リスク/利益相反を丁寧に説明できる姿勢が信頼を生む。
  • 公的機関・金融機関との協働:一次情報と難案件が集中するフィールドで、士業の中立性と継続支援力が活きる。
  • 多士業連携によるワンストップ:総合格闘技的な性格を持つ事業承継やM&Aのコンサルティングは様々な専門家が協力し取り組むことが望ましい。

当研究会は、士業限定の学びと実践の場として、こうした “現場で使える知恵” と “倫理的な進め方” を互いに磨いています。

「これから事業承継・M&A支援に本格参入したい」
「公的機関や金融機関との連携モデルを築きたい」

―― そんな想いをお持ちの士業の皆さまを歓迎します。
専門家が持つリアルな経験談と様々なノウハウを“例会”で体感してください。

まずは見学から、どうぞお気軽に。
一緒に、地域企業に寄り添う“品位あるネットワーク”を育てていきましょう。

✒ 登壇者プロフィール

中小企業診断士 尾形 吉通
合同会社そうわ経営パートナー 代表社員

中小企業診断士 尾形 吉通

1977年宮城県生まれ。全国転勤を17回繰り返し2022年に兵庫に赴任、1年後に人脈ゼロで独立。金融会社や保険会社でBtoBキャリアを積み、相談件数は1,000件以上。現在は経営コンサルティングと資産形成コンサルティングの二刀流で精力的に活動している。
2025年10月「オーナー経営者のための事業承継」(仮題)」出版
URL⇒https://souwa-ka.com/

✒ 執筆・編集:田中 寛也(中小企業診断士)

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